6月のサウスカロライナ州チャールストンの教会銃撃事件以来、南軍旗(Confederate flag)の展示や使用をめぐる対立が激しさを増している。Confederate flagは、南部白人が主張するところによると、南部文化の『誇り』の象徴であるが、特に黒人やその他のマイノリティーらにとっては人種差別や人種隔離主義の歴史を具現化する存在である。いかに旗の支持者が「自分たちは人種差別主義者でない」と主張しようが、Confederate flagが20世紀半ば頃から人種差別主義者や人種隔離主義擁護の象徴として掲げられてきたことは否定できない。実際、チャールストン事件の銃撃犯は、インターネット上に人種差別主義を擁護する意見と共に、Confederate flagをはじめとする人種差別主義のシンボルを身に着けた写真を掲載している。
事件後、Confederate flagを飾り続けていたサウスカロライナ州議会が同旗を撤去したり、アマゾンやウォルマート等の全米大手企業がConfederate flagの販売を中止したりしたが、これに伴い、同旗の支持者が猛反発。南部の誇りと歴史を消し去る行為だと主張し、旗の保護を呼びかける集会が南部各地で相次いでいる。彼らは、Confederate flagやそれを支持する集会は憎しみではなく、文化的遺産に基づくものだ("heritage, not hate")としているが、この考え方には問題がある。
南北戦争勃発直前の時代を専門とする文学研究者によれば、Confederate flagの制作者は、白人至上主義の象徴として同旗を作った。つまり、この旗の存在理由は人種差別主義なのである。南部は、南北戦争を当時の北部の人間(ヤンキー)による侵略戦争だと考え、奴隷制の廃止を求める当時の北部には南部の経済力を削ぐ意図があったと考えている。このため、南北戦争は南部の生業を守っていくためのものであり、Confederate flagはその誇り高き戦いを象徴するものだと解釈しているのだ。だが、Confederate flagを支持する人々は、南部が何を守るために戦ったのかということを認めようとしない。彼らの祖先が守ろうとした南部の「生業」とは、白人至上主義と奴隷制度によって支えられた経済及び社会体制である。つまり、Confederate flagは、黒人の人間としての尊厳を踏みにじった社会体制を「守る」ための戦いを象徴するものなのだ。
若い南部の人間の中には、南部の歴史を勉強せずに、ただ盲目的にConfederate flagを「南部の誇り」の象徴として支持する者も少なくないが、このような態度は愚かで無責任だとしか言いようがない。Confederate flagが人種差別の歴史の産物であることは鮮明な事実であるばかりか、この旗は、20世紀半ばの人種隔離主義廃止に反対する者たちによって採用され、今でも存在するクー・クラックス・クラン(KKK)や人種的中傷の言葉を発するような人種差別主義者が「守ろう」としているような、白人至上主義の象徴としか考えられないものなのだ。実際、この旗は、未だに黒人を下等の存在と考え、彼らを威圧しようとする白人によって使われるシンボル。つまり、"Heritage, not hate"の"heritage"は、どう解釈しても"hate"に基づくものなのだ。