Sunday, December 14, 2014

男性によって統制される女性の「性」と「身体」の表現

自身の女性器を主題としたポップアートの制作で知られるアーティスト・ろくでなし子さんの逮捕及び再逮捕は、一部の海外メディアにも取り上げられた。それは、単に珍事件ということではなく、表現の自由の問題女性が自らの性に関わる表現をした際に社会から受ける反応という視点からの報道が多い。私は海外在住なので、日本国内で、インターネット上の単発的な記事以外、この件について具体的にどのような報道がなされ、どのような意見交換がなされているのかは知らない。だが、日本社会では、彼女のアートが猥褻であるか否か、また、展示場所がアダルトショップであったのにわいせつ罪の容疑は適切か、といった視点からの討論以外しにくいのではないかと思う。だが、これは、根本的には、女性による自らの性や身体の統制の問題である。悲観的かもしれないが、この考えが日本の主流メディアを通じてまともに討論されているとはとても思えない。そこで、今回は女性が主導的に自身の性や身体を表現した際に受ける扱いについて書いてみたい。



ろくでなし子さんは、今回、自身の性器の型を基に制作したアート作品をアダルトショップに展示したことによるわいせつ物公然陳列罪や自身の性器を模ったカヤックの制作企画にあたってその3Dプリンター用データを送信したわいせつ電磁的記録頒布罪の容疑などで逮捕されている。これに対し、本人は、そもそも自分の身体は猥褻ではない、と主張している。彼女は、自身の性器をモチーフとした作品を制作する活動について、まず、自身の女性器がどのようなものか知らず、正常なものか分からなかった不安感を覚えたことから、女性器をより女性にとって身近なものにしたいことをきっかけに始めたと出資応募ビデオにおいて語っている。女性器は女性にとって自らの身体の一部であるにも関わらず、タブーとされ、その存在自体「わいせつ」とのレッテル貼られているため、女性にとって身近なはずなのに遠く、歪んだ存在となってしまっている、とも語っている

これは、男性が社会において女性器の価値を設定しているからと言えよう。つまり、女性が自身の性器を知ったり、その統制を取ったりする事は受け入れがたく、女性器は(男性に)セックスを提供するためのみにある存在。よって、その存在自体「わいせつ」ということとなる。このような男性主導的な「性」や「身体」の考え方が、女性による女性器の捉え方を歪めているという現実は、ろくでなし子さんの出資応募ビデオにも表現されている。彼女は、同ビデオにおいて、「まんこのことを口にすると、おじさんたちに怒られます。でも、怒るくせに、まんこを見たがります。」と言っている。社会一般の女性器に関する見方が、男性主導的な価値観によって導かれていることを示す発言である。(ちなみにこれは、女性の身体を性的なものにする(sexualizeする)グラビア写真やヌード写真等よりも、乳房の本来の生物的な機能である授乳を公共の場ですることが論争の火種となる西洋社会の歪んだ価値観に似ている気がする。)

女性にとって女性器とは、ろくでなし子さんが言う通り、「生理・セックス・妊娠・出産」と自身の肉体の一部である。そして、その内のセックスとは、(女性器が卑猥な存在となる)「男性に提供する」ためのセックスではなく、(女性器が単に身体の一部として存在している)「女性が自身の意志で参加する」セックスであるべきなのだが、前者の型に当てはまらないセックスには考えも及んでいない。つまり、女性が自身の性や身体の統制を取るということが考えられない価値観によって導かれたものなのである。

女性器であろうが、男性器であろうが、性器というもの自体についての公然の話し合いを不快に思ったり、プライベートにしておくものだと感じる者もいるかもしれない。だが、日本社会が(他の多くの社会同様)、女性の身体を性的な「モノ」と扱う傾向があることは確かである。漫画、雑誌、テレビ等を見れば、女性の外見や性的望ましさに異常とも言える程の重度の価値が置かれていることは明らかである。女性が自身の身体や性を男性のためにではなく、自身のために統制を取り、表現したりすることが受け入れられることは珍しいことである気がする。

女性が自身の身体を知り、自身のためにその統制を取ることは嫌らしいことでも恥じるべきことでもない。特に、性器(男性器)を奉る伝統だって各地にある日本なのだから、何故、女性が自らの身体の一部である女性器に対する理解を深めることがいけないものなのか。このような視点から、ろくでなし子さんの件を考えていく日本人が増えていってくれればうれしいな、と思う今日この頃です。



*NOTE: This post has no companion post in English because I wrote it primarily to (try in some extremely long-shot way) to fill a gap/insufficiency I perceived in the Japanese discussion over the arrest of an artist who produces pieces based on molds of her vagina. This artist wanted to de-stigmatize vaginas for Japanese women because in Japan, vaginas are treated as obscene, despite the existence of "penis festivals," which (predictably) celebrate the male reproductive organ, in several localities. Much more articulate coverage and analyses of her arrest(s) can be found on the Ms. Magazine websiteMic, and probably some other sources that I haven't checked out. By the way, the Mic story contains the link to Jon Stewart's fantastic segment on the incident.